以前のコラムでは睡眠時無呼吸症候群と高血圧との関係についてお話しさせて頂きましたが、それ以外にもいろいろな合併症を引き起こしたりすることが分かっています。今回は、睡眠時無呼吸症候群が及ぼす“意外な？”影響についてご紹介します。

睡眠時無呼吸症候群は放置すると10年後には10人に1人が亡くなってしまう？

　2005年のスペインでの研究では、重症の睡眠時無呼吸症候群の方（1時間あたり30回以上無呼吸もしくは低呼吸がある方）の生存率は明らかに低く、治療を受けないで放置していると、10年後には約15％の方が亡くなっていることが報告されています。一方で正しい治療を受けた方の死亡率は約5%であり、健常者とほとんど変わらない数値とのことです。

　「たかがいびき」と侮ることなかれ、ということです。

睡眠時無呼吸症候群は新型コロナウイルスにかかりやすく、後遺症をおこしやすい？

　日本でのアンケート調査では、睡眠時無呼吸症候群の方は健常者と比較して新型コロナウイルス感染症にかかるリスクが16.6倍高かったことが判明しました。

　また、イギリスでの研究では、睡眠時無呼吸症候群の方は健常者と比較して新型コロナウイルス後遺症の発症リスクが75％高いと報告されています。

　新型コロナウイルスも今や5類感染症となり、相変わらず感染力は強いもののウイルスの力は落ちてきてはいます。しかし、今でも後遺症で悩んでいる方はいらっしゃいます。

インフルエンザや他の感染症と睡眠時無呼吸症候群の関係については明らかになっていませんが、今後また他の感染症のパンデミックが起きる可能性もあると思いますので、今のうちに対策を練ってみませんか？

睡眠時無呼吸症候群は長引く咳の原因かもしれない？

　8週間以上続く咳（慢性咳嗽）には様々な原因（いずれこのコラムでも詳しく紹介します！）がありますが、睡眠時無呼吸症候群も原因となりうることが分かってきました。

　2007年にイギリスで、4名の慢性咳嗽の方に対しCPAP治療を行ったところ速やかに症状が改善した症例が報告され、それ以後も世界各地で数例同様の症例が報告されています。

　睡眠時無呼吸症候群の方の咳の発症機序はまだ判明していません（非アレルギー性の喘息や逆流性食道炎などと関連している可能性もある？）が、これらの症例報告ではいずれもCPAP治療によって咳が改善しており、直接の原因である可能性が高いと思われます。

　長引く咳があり、いろいろな治療を受けても良くならない方は、一度睡眠検査を受けてみてはいかがでしょうか？

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