血圧が高いと言われたらどうしたらよい?―高血圧症について―

健康診断などで血圧が高かった際、血圧計の購入を勧められたり、医療機関を受診するよう勧められたりすることがあると思います。
実際に血圧が高いだけでは症状がないことが多く、高いことで何が問題となるのかの説明を受ける機会は少ないと思いますので、ここで解説させていただきます。

血圧が高いと、全身の血管(動脈)に負担がかかります。

負担がかかった状態が続くと血管は硬くなります(動脈硬化)。

そのまま放置してしまうと、血管が裂けたり(出血)、詰まったり(梗塞)して、

様々な臓器に様々な病気を引き起こします。

・脳→脳梗塞、脳出血、くも膜下出血

・心臓→心筋梗塞・狭心症、心不全

・血管→大動脈瘤、大動脈解離、閉塞性動脈硬化症

・腎臓→慢性腎臓病、腎硬化症

・目→眼底出血

これらの病気には命に関わるものも少なくはありません。日ごろから血圧を正常範囲に保つことで、これらの病気にかからないようにすることが大事です。


今年に入ってから、「高血圧の基準が160/100以上に変わった」といった話を散見するようになりました。これに関してはどうやら大きな誤解があるようです。

高血圧の診断基準は、従来から言われているとおり、

「診察室で測定して140/90以上」もしくは「家庭で測定して135/85以上」

で変わっていません。

これにはしっかりとした根拠があり、上記の基準を超えると、上記の病気の発症率および死亡率が上昇するというデータがあるからです。

では、「160/100以上」とは何の基準なのかと これは、直ちに医療機関を受診することをお勧めする値です。

これらの中間の「140~159/90~99」は、1か月以上生活習慣を見直して血圧が下がらなければ医療機関を受診することをお勧めする値になります。


日本人の高血圧の9割ほどは、はっきりとした原因のない「本態性高血圧」といわれています。

この「はっきりとした原因」というのは「血圧を上昇させるような他の病気」という意味であり、全く原因がないわけではありません。

遺伝、塩分摂取過多、喫煙、肥満、運動不足、睡眠不足、ストレスなど複数の要因が重なり合うことで血圧が上昇します。

よって、「生活習慣の見直し」とは遺伝以外の要因を改善していくこととなります。

一方、1割ほどは何らかの病気のせいで血圧が上昇する「二次性高血圧」となります。

内分泌性疾患(下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎など)、腎疾患(腎実質性、腎血管性)、睡眠時無呼吸症候群、薬剤などが原因となります。

原因となる病気の治療が重要となりますが、中には「本態性高血圧」として漫然と治療されていることも少なくなく、高血圧と診断された時点でこれらの病気がないかどうか調べることは非常に大事です。


まずは自分の普段の血圧を知ることが重要です。

職場やスポーツジムなどに設置されている血圧計での測定でも良いのですが、出来れば血圧計を用意して、自宅で1日2回、朝と夜に測定することをお勧めします。

2週間ほど測定を続け、基準値を超えることが多いようでしたら、「生活習慣の見直し」をしてください。

1ヵ月続けても血圧が下がらないようでしたら、医療機関を受診してください。

受診する際は、直近の健康診断の結果を持参すること(余計な検査を受けなくて済みます)と、受診前の食事を摂らないこと(検査をする可能性があるため)をお勧めします。